『シニア人材マネジメントの教科書』 (﨑山 みゆき 著)

『シニア人材マネジメントの教科書』 ‐老年学による新アプローチ

『シニア人材マネジメントの教科書』 (﨑山 みゆき 著) 

監修者:長田 久雄
著 者:﨑山 みゆき
出版社:日本経済新聞出版社
発 行:2015/05
定 価:2,000円(税別)


【目次】
1.シニア社員はなぜ、お荷物扱いされるのか?
2.60歳新入社員と新卒新入社員はこう違う
3.ジェロントロジーでシニアを理解する
4.シニア社員に対するジェロントロジー的対応術
5.ケースで見る シニアマネジメントで成功する会社
6.シニア人材を活かす管理者の養成

  • ■「老年学」の視点でシニア人材を活かす

     いま企業で行われている就業規則の改定やコーチングの導入などの施策だけでは、シニア人材を活かし、組織パフォーマンスをあげることはできない。シニア人材を理解する「老年学」(ジェロントロジー)の視点が抜け落ちているからだ。本書は、老年学に基づき、シニア人材のマネジメントを成功させるノウハウを紹介している。
     老年学とは、年齢が人に与える影響を、心理、経済、教育などあらゆる面からとらえる学問である。それによると、最近では高齢になっても伸びる能力があることが分かってきている。新しいことを覚えるという点では、シニア世代は若年層にかなわないが、一般知識や判断力など、今までの業務の延長線上でできる仕事に関しては長けている。ただし、その能力を引き出すことができるのは、若いときに知識や経験をたくさん積んだ人に限ってのことで、蓄積がなく引き出しが空のまま歳をとった人には無理なので、ここをはき違えないように、と著者は言う。

  • ■若い頃からの延長線上にシニアに向いている仕事がある

     シニア世代に向く仕事を考えるときの視点は、業種ではなく、職種である。たとえば、外食チェーン店で働く経理の女性が60歳まで働けるだろうと話す一方、店長の男性は帰宅が深夜2時を回ることも多く、50代半ばには身体がもたないと不安顔で言う。同じ業種の中でも、職種で考えることが大切だ。
     また、身体へのストレスの強弱も考慮すべきだ。ただ、これはシニアには深夜早朝勤務が無理だという単純な話ではない。あるビルメンテナンスの会社では深夜の警備業務や早朝の清掃業務に従事する人の半数以上は60代で、前職を調べると深夜早朝勤務の経験者であることが分かった。シニア向きなのは前職と比べて勤務時間など環境の変化が少ない仕事であり、不向きなのは、それらの変化が大きい仕事である。したがって、今までと異なる時間帯や環境で働かせる場合は、残業をさせない、仕事量を減らすなどの工夫によりシニア労働者にストレスがかからないように、と著者は提言している。

  • ◎監修者プロフィール

    桜美林大学大学院老年学研究科教授。専門分野は「老年心理学」「臨床心理学」など、老年心理学研究の第一人者。1979年早稲田大学大学院修了(心理学専攻)。日本老年社会科学会前理事長、日本認知症ケア学会副理事長などを歴任。著書は『家族のココロを軽くする認知症介護お悩み相談室』(中央法規出版)他多数。

  • ◎著者プロフィール

    株式会社自分楽代表取締役、静岡大学大学院客員教授。博士(学術)、産業カウンセラー。専門分野は「コミュニケーション」「生涯学習論」など。民間企業に就職後、2000年桜美林大学大学院に進み、ジェロントロジーを学ぶ。2001年修士取得。ジェロントロジーに基づく指導団体は全国の自治体・企業・学校など1,500を超える。著書は『60歳新入社員の伸ばし方・活かし方』(労働調査会)他多数。