『イシューからはじめよ』 (安宅 和人 著)

『イシューからはじめよ』 ‐知的生産の「シンプルな本質」

『イシューからはじめよ』  (安宅 和人 著) 

著者:安宅 和人
出版社:英治出版
発行:2010/12
定価:1,890円


【目次】
 1.イシュードリブン――「解く」前に「見極める」
 2.仮説ドリブン(1)
   ――イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
 3.仮説ドリブン(2)――ストーリーを絵コンテにする
 4.アウトプットドリブン――実際の分析を進める
 5.メッセージドリブン――「伝えるもの」をまとめる

  • ■圧倒的に生産性の高い人たちにみられる共通点とは

     著者の安宅和人氏は、これまで10年以上にわたって外資系コンサルティング会社での経営コンサルタント業務に携わってきただけでなく、科学者として脳神経科学の研究も行ってきた。その経験から、ビジネスであろうとサイエンスであろうと、「本当に優れた知的生産には共通の手法がある」ということに気づいた。具体的に言うと、「圧倒的に生産性の高い人」にみられる共通点だ。
     そのカギとなる考え方が「イシュー」である。「何に答えを出すべきなのか」についてブレることなく活動に取り組むことがカギとなる。
     イシューを知り、それについて考えることでプロジェクトの立ち上がりは圧倒的に速くなり、混乱の発生も予防できる。目的地の見えない活動はつらいが、行き先が見えれば力が湧く。つまり、知的な生産活動の目的地となるものがイシューなのだ。

  • ■問題解決のための真のアプローチ「イシューからはじめる」

     「論文を書くって、そもそも何から考えることなんだろう」「問題解決のプロジェクトって、どう進めていくんだろう」
     ビジネスパーソンであれ科学者であれ、「毎日の仕事や研究で発生する問題の本質がどうもつかめない」と、もやもやすることがよくあるが、本書はそういう人のヒントとなるように書かれている。タイトルとなっている「イシューからはじめよ」という考え方は、世の中一般の考え方とは異なるところが多々ある。何よりも大切なのは、「一般常識を捨てる」ということ。代表的な考え方を挙げると、
    ・「問題を解く」より「問題を見極める」
    ・「解の質を上げる」より「イシューの質を上げる」
    ・「一つひとつを速くやる」より「やることを削る」
     など。生産性向上のために「効率を重視する」という従来の一般的なアプローチと、この「イシューからはじめる」こととは、焦点が異なることが理解できるだろう。

  • ◎著者プロフィール

    東京大学大学院修了(生物化学専攻)後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。4年半の勤務後、イェール大学・脳神経科学プログラムに入学。3年9ヵ月でPh.D.取得後、マッキンゼーに復帰。マーケティング研究グループのアジア太平洋地域における中心メンバーとして活動するほか、新人教育のためのトレーニングを担当。2008年よりヤフー株式会社COO室長に就任。