『アップル帝国の正体』

『アップル帝国の正体』

『アップル帝国の正体』 

著 者:後藤 直義/森川 潤
出版社:文藝春秋
発 行:2013/07
定 価:1,365円


【目次】
 1.アップルの「ものづくり」支配
 2.家電量販店がひざまずくアップル
 3.iPodは日本の音楽を殺したのか?
 4.iPhone「依存症」携帯キャリアの桎梏
 5.アップルが生んだ家電の共食い
 6.アップル神話は永遠なのか

  • ■「アップル帝国」の植民地と化した日本企業

     1976年から2013年。このわずか40年弱の間に、アップルは歴史上で類をみない成長を遂げた。この先進的巨大企業はさまざまな日本の企業と交叉して成り立っている。iPhoneを分解すると、重要部品の多くをソニー、パナソニック、シャープ、東芝などの日本企業が供給していることがわかる。世界に誇ってきた日本製の最先端の電子部品、金属加工、自動工作機械などは、アップルを頂点とする強固な「帝国」の支配下にすっぽりと入りこんでしまったのである。アップルを支える部品や技術の多くを提供しながら、日本の家電メーカーはなぜiPhoneのような商品を生み出すことができなかったのだろうか。
     本書は、共に週刊ダイヤモンドの記者である二人の著者が、かつて輝いていた日本のものづくりが凋落してしまった原因とともに、スティーブ・ジョブズという天才が放つまばゆい光の背後にある「アップル帝国の正体」を明らかにしている。

  • ■アップルの「鏡」に映し出された日本企業の光と影

     アップルは日本企業にとって「鏡」のような存在だ。そこに日本企業の素晴らしさと大きな失敗が映り込んでいる。高価でも若者が飛びつくような圧倒的に美しいデザイン。そのデザインを実現させるために、アップルはアジアの国々に散らばる下請けメーカーを丹念に調べ上げた。さらに、巨大な自社工場を自前で抱えてこそ一流のメーカーだ、という従来の固定概念も大胆に捨てた。そして、なによりも一つの端末で音楽から映像、通話、ビジネスコミュニケーション、地図、ゲームまで楽しむことを可能にしたソフトウェアの力。これこそが、アップルが注力してきたノウハウの蓄積された分野であり、日本企業にとっては完全に出遅れた弱点であった。
     しかし、その「アップル帝国」にも翳りがみえる。栄枯盛衰のサイクルが速まるデジタル家電業界ではアップル帝国でさえも永遠ではないのだ。その植民地化から脱することが、日本企業の将来の「鍵」になり始めている。

  • ◎著者プロフィール

    後藤直義:週刊ダイヤモンド記者。1981年、東京都生まれ。青山学院大学文学部卒業後、毎日新聞社入社。2010年より週刊ダイヤモンド編集部に。家電メーカーなど電機業界を担当し、特集『日本を呑み込むAppleの正体』『さよなら! 伝説のソニー』などで執筆にあたる。著書に電子書籍『ヤメソニーに訊け!』(ダイヤモンド社)。

    森川潤:週刊ダイヤモンド記者。1981年、米ニューヨーク州生まれ。京都大学文学部卒業後、産経新聞社入社。横浜総局、京都総局を経て、2009年より東京本社経済本部。2011年より週刊ダイヤモンド編集部に。エネルギー業界を担当し、東電問題や、シェールガスなどの記事を執筆する。2013年、電子書籍『誰が音楽を殺したか?』(共著、ダイヤモンド社)がアマゾンで1位に。その他の著書に電子書籍『シェールが起こす3つの革命』(同)など。