『0ベース思考』 -どんな難問もシンプルに解決できる(スティーヴン・レヴィット/スティーヴン・ダブナー 著)
-
■既存の知識や常識、思い込みをリセットする問題解決のための思考法
私たちは解決しなければいけない大きな問題に直面した際に、これまでの経験や蓄積した知識、ものの見方を総動員して臨みがちだ。しかし本書が提案するのは、そうした経験や知識、常識などをいちどリセットすることで、斬新なアイディアや最善の問題解決策を生みだす思考法だ。著者の二人は、そうした既存の枠や常識にとらわれない発想で経済や社会現象を分析する手法を「フリーク経済学」と呼んでいる。
サッカーの大事な試合で、勝敗を決めるPK(ペナルティー・キック)を蹴ることになったとする。キーパーにブロックされないよう、ほとんどの選手は当たり前に左右どちらかのコーナーを狙うだろう。しかし、ここでその「当たり前」を捨ててみる。キーパーが陣取るど真ん中に蹴り込むのだ。よくよく考えてみれば、キーパーはボールが蹴られた瞬間に左右どちらかに飛ぶはず。だから、ど真ん中のほうが実はシュートの成功率は高いのだ。 -
■問題を正しく捉え直すことで成功した早食い世界王者
大事なのは問題を正しく捉え直すことだ。ホットドッグ早食い選手権で世界記録を更新してチャンピオンになった小林尊さんはそれを実践して名声を得ることができた。
小林さんが、世界選手権に初めて出場す前は、どの出場者も、単に「ホットドッグをそのまま口に突っ込み、端から噛み砕き、水で流し込む」ことしかしていなかった。そこで小林さんは「ゼロベース」で考えてみた。食べる前にソーセージとパンを半分に割ってみては? ソーセージとパンをばらしてみたら? そうして彼は誰よりも早く食べられる方法を編み出した。ライバルたちは「もっとたくさん食べるにはどうするか」と考えた。小林さんは違う。「食べやすくするにはどうしたらいいか」と問題を捉え直したのだ。
著者は「8歳児のように考える」ことを推奨する。子どものように頭に浮かんだことをそのまま外に出すことで解決の糸口が見えることは珍しいことではないのだという。 -
◎著者プロフィール
スティーヴン・レヴィット:シカゴ大学経済学部教授。ハーバード大学(経済学)卒業後、MITで経済学のPh.D.取得。2003年、ノーベル経済学賞の先行指標と言われるジョン・ベイツ・クラーク賞受賞。04年よりシカゴ大学ベッカー・フリードマン研究所ディレクターを兼務。06年、タイム誌「世界で最も影響力のある100人」に選出。
スティーヴン・ダブナー:ジャーナリスト。コロンビア大学でMFAを取得。同大学で教鞭を執った後ジャーナリストに。NYタイムズ、ニューヨーカー誌ほかで執筆を行う。